C 変化を楽しむ個性のある家

C-1 スキップフロア

 

 スキップフロアとは、ひとつの階に複数の床レベルを作って、上下階に連続性を持たせたものを言います。(東急ハンズ渋谷店は典型的なスキップフロアです)

 平らで広い敷地に建つ建物なら、無理にレベル差をつけることはまさにバリアフリーに逆行するもので、コストばかりかかって無駄なものといえるでしょう。しかし、傾斜地であれば、敷地の高低差の反映されたスキップフロアは宅地造成による平らな宅盤作りよりもコスト安で、周辺への影響も小さくできるのです。


 平らな敷地でも、建物内部に高低差を作る積極的な動機があれば、スキップフロアも考えられるでしょう。その動機には、半地下の導入や面積不算入の収納室導入、ビルトインガレージなどが考えられます。


 スキップフロアの効果とは、吹き抜けのように別の階への連続感が生まれることです。隣の部屋が半分上がることで、真上の部屋との中間に位置することになり、これを媒介にして上下の連続感が生まれるのです。

 ただ、思いつきのスキップフロアは、いずれその効果よりも煩わしさが目立ってくることもあるので慎重な検討が必要です。

C-2 半地下

 

 半地下の部屋に座って目の高さに地面を見ると、とても落ち着いた気分になります。理由はわかりませんが、その非日常性は興奮よりもクールダウンのほうに作用するようです。

 実際に半地下に書斎などを持っている人に多く聞かれる感想ですから、その効果は普遍的なものなのでしょう。


 防水や除湿方法など、工事をする上でクリアしなければならない項目もありますが、敷地条件などによっては一考に値するものだと言えます。

C-3 屋上 

 

 木造住宅の防水性能が向上して、ルーフバルコニー(屋上)を持つ家が増えました。

 ときにはビールを屋上で飲みたいとか、庭代わりに日光浴をしたい、などの動機があるようですが、完成後にそのように使い続ける人は少ないようです。
 ひとつには飽きてしまうこともあると思いますが、大抵の場合、装置の不足による使い勝手の悪さが原因のようです。


 次のものが足りないケースが見られるので、しっかり確保して屋上の使いやすさを向上すれば、楽しい時間が増えるでしょう。


○サンダルを容易に室内にしまえるスペース。
 (屋上室内部分にサンダル分のタタキがあれば尚良し)
○折りたたみ椅子を室内にしまえるスペース。
 (出し放しの椅子は埃混じりの雨で汚れる)
○水道が使用できる
 (掃除がラクになる。夏は水に触れたい。)
○防水コンセント。
 (移動型照明器具が欲しくなる。音楽やテレビ用にも)
○室内の家族の顔が見やすい。
 (連絡のたびに叫ぶのは煩わしいし、屋上は意外と孤独)
○日陰をつくる。
 (まぶしいと疲れるし、直射日光では本が読めない)
○周りから見られない工夫。(落ち着けるように)

C-4 らせん階段

 

 らせん階段に、危険とか安っぽいという印象を持っている人もあるでしょう。でも、踏み外しても落ちる量が限定されるため、踊り場の無い鉄砲階段より安全という意見もありますし、優雅なイメージを持っている人も少なくないようです。

 真ん中の支柱だけで支持され、四周が解放されていることは、解放感や明るさ、そして軽やかさという視点からは大きな長所があります。


 木製の既製品もありますが、やや高価です。そのため鉄骨で製作されることが多くなりますが、鉄はかなり薄くすることができるので、とても意匠性に富んでいます。

C-5 低天井

 

 高い天井の開放感や豪華さはとてもわかりやすいものです。

 それにくらべて、低い天井の親しみやすさや落ち着ける感じはなかなか話題になりません。が、高さを効果的に感じさせるためには、低さを並べて見せることが有効ですし、天井の高低の変化は奥行き感を生んで部屋の個性も引き立てます。

 

 低い天井を上手に生かすことができれば、家作りの立体パズルはますますバリエーションが増えて可能性が広がるのです。

C-6 土間

 

 庭など季節感のある外部と有効に繋がると、生活に潤いが増すことが期待できます。それなのに庭に出る機会が少ないとすれば原因があります。観察すると、それは内部と外部のつながりが悪くて出入りに煩わしさがあるケースなどで、下足への履き替えをいかにスムーズに行えるかがキーのようです。

 サンダルが濡れないようにしまってあるだけで面倒ですし、床と庭のレベル差が大きいと億劫さにつながります。


 庭への距離を縮め、親しみやすさを持たせるために土間を作ってみてはどうでしょうか。庭に出て、眺めていて寒く(暑く)なったとき、そのまま土間に入って床に腰掛け、サッシを閉められて、かつ眺め続けられる土間が魅力的です。

C-7 非直角

 

 直角は合理的であるに決まっています。ですから、三角形の敷地などといったわかり易い理由がないのに直角以外の建物を計画すると、「どうして?」という批判含みの質問が飛びます。

 でも、少しだけ材料費と大工さんの手間が増えるという程度なら全否定されることもないでしょう。


 建築家の長谷川逸子さんは長方形のプランの真ん中に斜めの間仕切り壁を設けましたし、室伏次郎さんはだんだん細くなる劇場のような階段を作りました。どちらも魅力的な「場」を作りだしています。それに日本人の大好きな巨匠フランクロイド ライトも、60°のグリッドで設計を繰り返しました。
 合理性も大事ですが、同時に「可能性」にチャレンジする楽しみを残していたいものです。