住宅展示場の見方

1 全体を見渡す

 

 住宅展示場に着くなりモデルハウスに入っていく人を見かけますが、なるべくならゆったりと外観を眺めながら歩きまわってみたいものです。何となく良い印象をもったり、ちょっと自分向きではなさそうだと思ったり、少し時間を充てるだけでいろいろな感想が湧いてきます。
 ご家族が一緒なら、「何となく好き」、「これはウチには合わないね」、「私たちのイメージに近くない?」、などと思いつくままに会話しているとだんだんどこかに収斂していくものです。 できたら、「暖かい感じ」とか「可愛い感じ」、「豪華さがいい」あるいは「シャープでカッコ良い」などと形容詞を加えていくともっとイメージが固まっていきます。
 そして、各モデルハウスにこうしたサブタイトルを付けていくと、それが住宅展示場の見取り図のようなものとなって、その後の情報と合わせて立体的な印象が残るようになります。
 初めにこのイメージ地図を作っておくと、モデルハウスでたくさんの情報にさらされても冷静に対処できるようになるので、気持ちに余裕が生まれます。

2 外観の印象

 

 モデルハウスは60坪くらいの大きな家が多く、立派に見えるように間口も十分に確保され、デザインしやすいように総二階を避けています。でも実際に建てる家はなかなかこのような好条件を備えてはいません。
 道路からよほど離して建てないかぎり全体を同時に見ることは少ないですし、何よりまったく同じように建てるわけではないのですから、ちょっと視点を変える必要があります。
 建物に近寄って外装仕上げの印象を観察することをお勧めします。「帰ってきたなあ」とホッとさせてくれる外壁はどんなものなのか、という視点で選んでおけば、規模の違いから全体の印象が総崩れするということが避けられます。

3 上がり框の高さ

 

 純和風住宅を別として、現代日本の住宅には欧米のデザインが多く持ち込まれています。 それでもそっくり真似できないのが玄関です。 靴を脱がない欧米住宅は、タタキと下駄箱が必要ないので日本の住宅よりずっとデザインしやすいのですが、日本ではこれらの処理に知恵を必要とします。
 上がり框という、おおげさに言えば結界のようなところに、どんな材質でどんなレベル差を設けるのが良いのか、いくつかのモデルハウスを出入りすることで、気持ちのよい高さなどを確かめましょう。

4 窓の材質と形状

 

 少し前までは、窓はアルミ製で3~4色の中から選択する・・・というのが一般的でした。最近は樹脂製や木製も増えてきて、材質以外でも断熱性や防犯性など、新しい性能を訴えるものも出てきています。早い段階で質感、デザイン、性能を確認しておきましょう。
 サッシが内外観の雰囲気に与える影響はとても大きく、開閉の操作感も住み心地に影響するので、要注目です。

 日本では長く窓といえば引き違い窓でした。このため、片開きや上げ下げ、回転などのサッシに新鮮さを感じる人が少なくありません。でも、通風の調節しやすさや開閉の手軽さ、網戸の取り扱いのしやすさなどでは引き違いの利点が小さくありません。イメージだけに頼らず、気候やご自身のライフスタイルも意識して、場所ごとに丁寧に選べば後々生活に活きてきます。

5 室内扉

 

 室内扉は、価格やデザインによって数種類用意されています。モデルハウスで同じものを使用していなくても、サンプルなどがあるので観察してみましょう。
 ムクの木製のものや、合板に突き板(天然木を紙状にスライスしたもの)やシートを貼ったもの、塗装のものがあって、枠のデザインに特徴を持たせたものなどもあります。
 建材メーカーの既製品、欧米からの輸入製品、一軒ごとの製作品という違いによっても家の印象が変わります。
 収納扉も、室内扉と同じシリーズで選ぶのが一般的ですし、玄関収納(靴入れ)が室内扉のシリーズに組み込まれていることもあるので、室内扉のデザインは多くの場所で繰り返し使用されます。このため全体的な印象に占める割合がとても高くなることを意識しましょう。
 また、蝶番やハンドルも強い印象を与えるので、材質・形状をチェックしておくことが大切です。

6 フローリング

 

 扉と同じようにムク、突き板、シート、という材質の違いがあり、ワックス、コーティングなどの保護材の別もあって数種類があります。
 フローリングと扉はコーディネートされていて、両方の効果がインテリアの雰囲気を支配するので、じっくり選ぶことが大切です。

7 床の歩行感と音の伝わり

 

 歩行感は、フローリングなど仕上げ材の影響もありますが、多くは下地となる合板の厚みや、それを支える根太という木材の大きさや割り付け間隔によって変わってきます。微妙な違いに神経をとがらせる必要はありませんが、一度は気にしておきたいものです。
 また、階下への音の伝わりは、下の階の天井の吊り方でも違ってきます。伝わってはいけないということではなくて、どの程度ものか実感しておきましょう。(モデルハウスが特別仕様のこともあるので確認が必要です。)

8 モデュール

 

 モデュールとは基準寸法のことです。間取り図を書くときのマス目がこれを表していて、廊下や階段の幅に現れます。関東の標準モデュールは江戸間とも呼ばれ、壁の芯から芯で91㎝です。京間は98.5㎝ですが、関東ではあまり見られず、江戸間を超える場合は1m(100㎝)が採用されているようです。これをメーターモデュールと呼びます。わずか9㎝の差なのですが、印象はだいぶ違ったものになります。メーカーやシリーズによって採用しているモデュールがあるので質問してみましょう。
 モデルハウスの印象が一般住宅と違う原因のひとつに、廊下・階段の幅がとても広いことがあります。これはモデルハウスという建物の特性上、複数の来場者がすれ違うためとられた措置ですが、その解放感はとても気持良く、印象に残ります。モデルハウスの中で通常幅のところを探し出して、双方を比較してその違いを実感してみましょう。

 全部の廊下・階段を広くすると部屋の広さに影響が出ますが、一部分を広げただけで大きな効果を生み出すこともあります。

9 外壁断面原寸模型

 

 モデルハウスの多くには、角材などが使われた少し無骨な模型が置いてあります。これは、仕上げが施されて見えなくなった外壁の断面部分を、実際の大きさで見せてくれるものです。家作りのハード部分の思想が最も現れるものなので、ぜひ説明を受けましょう。
 この模型で観察できるのは、断熱性能を得るための工夫と、構造体を漏水や結露から守るための工夫です。いずれも専門的な領域になってしまいますが、原理がわかれば家に対する理解度が高まり、愛着もわきやすくなるのではないでしょうか。
 結露は建物にとっての脅威ですが、建物に影響が出るほどでなくても黴やダニの温床となることから、実生活に害を与えるものです。このため、各社力を入れて防止に努めています。この結露を防ぐ方法について説明を受けて納得できれば、モデルハウス見学の成果はとても大きなものになるでしょう。

10 換気・空調システム

 

 家族のアレルギーの傾向や、窓の開閉頻度などの生活スタイルによって、室内の空気環境への期待は大きく変わります。全館空調などの高度なシステムは建築費を押し上げますが、後から付け加えることが困難で、しかし健康や快適性に直結することなのでじっくり検討したいところです。

11 ビニールクロス以外の壁仕上げ

 

 ビニールクロス以外では、布クロス、ペンキ塗り、ドライウォール、木質パネル、石・タイル貼り、漆喰・珪藻土、などがあって、上手く使えば個性的で豊かなインテリアを実現することができます。しかし、自然素材に近づくほど、材料のムラが目立ってクレーム原因になりやすいため、メーカーによっては使用に制限があります。価格もアップするので早めの確認・検討が必要です。

12 小さな工夫、小さな演出

 

 モデルハウスでは、多くの人が吹き抜けや中庭などに目を奪われるようですが、条件次第で導入が難しいこともあり、印象を測る要素としては優先順位を低くしておいた方が無難と言えるでしょう。でも、折り上げ天井や階段手すりの演出、あるいはカーテンボックスの付け方や空調機の取り付け場所などは比較的参考にしやすいものです。気に入ったものが見つかればチェックしておきましょう。

13 トップライト

 

 トップライトの効果は、実物でないと分かりにくものです。なかなかチャンスがないので観察してみましょう。夏は大変暑くなりがちなので、実際に設ける場合はシェードなどの装備が必要です。これらも操作方法を体験しておきましょう。
 ただ、トップライトの効果は、方位や周辺の建て込み方など外部環境で違ってきますから、実際に導入する場合は個別の条件に照らした検討が必要です。

14 操作感

 

 パンフレットやカタログでどんなに説明文を読んでも、設備や道具の大きさや使い勝手はなかなかわからないものです。
 展示場は実際に触れてみるチャンスなので、操作感をシミュレーションしてみましょう

15 家事動線

 

 ハウスメーカーを絞り込む材料にはなりませんが、いろいろな提案がなされているので、動き方をシミュレーションしてみましょう。これを体感しておくと、実際の計画時にイメージが出しやすくなります。
 また、物干しをバルコニーに設ける場合は、実際に立ってみて、奥行きと長さの最小限必要な寸法を把握しておくと計画がスムーズに進められます。

16 その他の提案や演出

 

 モデルハウスの平面図をもらうことができるので、参考にしたいところに丸をつけておきましょう。実際の計画に着手したときに、アイデアの引き出しが増えて楽しくなります。