着工に向けてのヒント
1 自転車置場
配置図や1階平面図を見ていて、自転車はこのあたりの余白に置けばよいかなぁ、と見当をつけておくだけだと、あとで少し困ったことになります。
自転車は思ったよりずっと大きく(約1.8メートル×0.5メートル)、振り回しのスペースも必要だからです。1台ならまだしも、複数台あるときは綿密な計画が必要です。
わかっていたはずなのに最後は車と並べることになって、子供が出しいれするたびに車に小さなキズが・・・という実例も少なくないのでご注意ください。
2 ビルトイン駐車場
敷地に余裕があれば、駐車場はなるべく建物に組み入れない方が賢明です。 コスト的にもデザイン的にもメリットが得られにくいからです。
それでも車を格納したい場合は、下屋(本体の隣に配置して、建物を延長する)にするか、別棟として建てる方が良いでしょう。
(2台分10坪として、ビルトインなら500万円、別棟なら250万円程度です)
しかし現実には、敷地に限りがあるためビルトインが必須、ということも少なくありません。その場合は、駐車スペースの幅に注意が必要です。
壁の芯(中心)と芯で一軒半、2.73メートルあれば充分だとする意見もありますが、その場合通路幅は0.5メートルくらいになります。
(壁厚で0.15、車自体で1.8通路反対側クリアランスで0.3確保した場合)
がんばってもう少し反対側に寄せれば真っ直ぐは歩けるものの、扉の開閉や荷物を持っての行き来などに余裕はありません。やはり目安として3.0メートルを確保したいところです。
3 玄関庇の奥行き
庇の出寸法は、建築面積に参入されないように90センチ程度のものが多くなります。これは、なんとか玄関扉の把手(レバーハンドル)を雨に濡らさずにすむものの、実際にも見た目にも余裕がないため、できるならあと30~40センチ欲しいところです。
そして、忘れがちなのが横方向の長さで、開く扉を避けても体が濡れないスペースを確保し、郵便受けと傘立てもその下に収めたいものです。 (建物に平行であれば、奥行き90センチ程度までは長さに関係無く面積不参入です)
4 霧除け(窓上の小さな庇)
以前の住宅は雨戸付きが普通でした。このため雨戸のレールや溝掘りが窓の外側にあって、その出っ張りが霧除け代わりになっていました。最近は雨戸が少なくなりましたし、欧米的な庇の小さい住宅ではデザイン的な処理が難しいため、霧除けが省略されることが増えています。
でも、雨の時に窓を開けるのは今でも楽しいことだと思いますし、急な降り出しに慌てないためにもなるべく霧除けはつけたいものです。
5 給水メーター・排水最終桝
この二つは公共の上下水道に接続する敷地内の最端ポイントになります。
このため、行政の管理の必要性から道路に面した位置に設けるよう求められるのですが、接続の際公道を掘り返すこともあり、よく準備しておかないと現場で位置を自由に動かすことが難しいものです。
ですから、設計・建設関係者に早めに位置確認しておきましょう。うっかりしてアプローとの仕上げを切り欠いて演出を台無しにしないように。
6 階段下トイレ
トイレが1・2階それぞれに設けられるようになって、1階では階段下にするケースが見られます。
階段下なので、当然天井には勾配がついたり、階段の段が現われたりするのですが、どの程度まで許せるかを設計段階で詳細に確認しておきましょう。
立てれば良いとする寸法と、圧迫感を受けたくないという寸法には大きな開きがあります。
7 キッチン床下収納
キッチンに収納を増やしたいという目的から、通路部分に床下収納を設けることがあります。
この場合、上を歩くとき揺れないまでも不安定な感じがあtって、周りの床部分とは違った音がすることに注意が必要です。
特にシンクやコンロの前はこまめに動くことが多いため、人によっては煩わしいと感じる度合いが強いようです。
それを承知の上なら良いのですが、使い勝手や収納量と比べて後悔する人も少なくないので予め体験してみることが大切です。
8 空調機配管
空調機室外機の設置スペースは、設計段階でよく確認しておきましょう。
本体工事と切り離して、建て主自らが電気量販店で購入することも多いようですが、この場合は設計者に頼んで位置と配管経路を図面に記入してもらいましょう。
空調機の設置業者はあっいう間に工事を終えてしまいます。初めに指示がなかったら、やり替えに気持良く応じてはくれません。予め指示図を渡すか立ち会うことがお互いのためです。
9 給湯器位置
ガス給湯器の性能はどんどん向上していますが、音と燃焼排気を出すことに変わりはありません。
風呂場やキッチンなどの水廻りが北側に配置されがちで、玄関周りには置きたくないため、給湯器は北側の狭い所に配置されることが多いようです。このとき、お隣に迷惑とならない配慮が大切です。
隣の家の寝室に近ければ夜遅い時間の使用がためらわれますし、排気で植栽を枯らしてしまうこともあります。後から移設すると、配管が多いため思った以上の費用がかかります。
10 画鋲の使える壁
壁仕上げがビニールクロスや塗装の場合、特に依頼しなければその下地は石膏ボードです。
石膏ボードは面的な大きな力には強いものの、針のように尖ったものには大変もろいので、画鋲を使うことができません。
このため、壁に写真などを多数貼ったりしたいときは下地をベニヤにするよう依頼しましょう。石膏ボード専用の鋲もありますが、画鋲ほど手軽には使えません。
11 余ったクロス
工事終了間際、クロスが余っていれば譲り受けて保管しておきましょう。要求する権利はありませんが、文字通り半端があれば気持良く残してくれるはずです。
ビニールクロスは廃番になることが珍しくなく、同じものがあっても製造工場や時期の違い、厳密には一巻きで作るロールの前後でも色などが微妙に変わって、小さな補修で目立ってしまうことが少なくないからです。
12 玄関庇の縦樋
玄関前のポーチとその屋根は、機能としては降雨や日射を防ぐものとして必要で、かつデザイン的には玄関の重要部分として家の印象を左右します。ここで、意外と難しいのがその屋根に降った雨の処理です。
通常の樋を這わせるといかにも無骨な印象になってしまうので、チェーンを伝わらせる方法や、軒樋を延長させて邪魔にならない位置に落とすことなど含め、デザインに気を配っておきたいものです。
13 タオルをかける位置
洗顔後、入浴後、タオルは手元に近いほどありがたいので、タオル掛けの位置を早めに考えておきましょう。
後から鏡やガラス面にフックを取り付けるのは面倒ですし、収納の扉なども干渉するので、意外と限られてくるのです。
浴室が内開き扉の場合、扉の脱衣室側にフックをつけておくと、浴室内にいたまま脱衣室に水滴を落とさずにタオルを手に取れます。
14 洗面器まわりの水滴
気になる人とそうでない人に分かれるようですが、洗面器の周りには水滴が落ちます。
人造大理石などのカウンターであれば目立ちませんが、木製の場合はなるべく濡らしたくありません。
水栓が洗面器から出ていれば、相当量の水滴を防止できます。
15 床下点検口
床下を覗く人はほとんどないと思いますが、本当は一年に一度くらい点検しておきたいものです。
湿気のようすを感じてみるだけでも、土台廻りの不具合を早く発見できる可能性が高まります。
収納などの床に点検口を設けておけば、5年に一度の防蟻処理も容易に行えます。
※キッチンなどの床下収納があれば点検口としても使えます。